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中国鍼灸・臨床現場訪問記 (2004年8月18日作成)

 この夏に中国上海を訪問、本場の中医(中国医学:日本では「東洋医学」という呼び方の方が一般的ですが、向こうではこう呼びます)の実際の臨床現場を見てきました。

1) 上海市中医医院

 市内中心部にある同医院は、普通の市民が通う総合病院で、その中で内科・耳鼻咽喉科・眼科・皮膚科と同じフロアーに「鍼灸科」と「椎拿科」がありました。

 始めに「椎拿科」を訪問。椎間板ヘルニア・坐骨神経痛の治療を見学し、私自身も腰痛治療を受けました。椎拿は日本では「中国式あん摩」と訳されることが多いので「筋肉をほぐし、血行や気の巡りを良くする」ものかと思っていましたが、実際にはそれに加えて骨格構造や神経支配も含めた総合的な診断・治療が行なわれていました。必要に応じてレントゲンやMRIも使い、また治療方法も「筋肉を緩めたうえで脊椎に動きをつける手技」や「ヘルニアに対しての牽引装置のついた特殊ベッドの使用(狭くなった椎間を牽引により広げたうえで、飛び出した椎間板を手技で中に押し込む治療)」など、カイロプラクティックと近いものが多く見られました。治療の最後に吸角療法(吸い玉とも呼ばれ、コップ状の容器の中を真空状態して皮膚に接触して吸引させ、局所の血行改善・筋緊張緩和や血圧低下を図る治療法)も行なっていましたが、いろいろと意見交換を行なった際の「私達は慰安的なことや表面的なほぐしではなく、本格的な治療を行なっている」という言葉が印象的でした。

 続いて「鍼灸科」を訪問。椎拿科以上に多くの患者さんでごった返していましたが、老若男女を問わず幅広い層の人たちが、身体に鍼・灸・吸い玉をつけてベッドに寝ている光景は壮観なものでした。肩・腰や膝の痛みだけでなく、冷え性・夜尿症から風邪にいたるまで多くの症状に対して人々が鍼灸治療を選択している状況を目の当たりにして「さすがは中医の本場だなぁ」と関心させられました。治療内容は、この日は「温鍼」(日本では灸頭鍼と呼ばれ、鍼を刺して柄のところに艾を着けて燃焼させることで艾の熱を鍼によって組織内に伝導させる治療法)や「吸い玉」が多用されていましたが、他にもいろいろな手法を用いる先生もおられるとのことで、機会があればそうした治療も見てみたいと思いました。


上海市中医医院正門


鍼灸科・椎拿科
内科や眼科と並び独立してます
脊椎に動きを
つける椎拿の
手技

竹の節による
吸い玉


椎間板ヘルニア治療用の
牽引装置付きベッド



膝関節症に
対する灸頭鍼


顔面神経痛の
治療風景



灸頭鍼を使った
顔面神経痛治療


2) 上海市静安区中心医院国際医療センター

 ここは、上海中心医院の中に2年前から設立された「24時間受け入れOKの外国人専用の病棟」で、西洋医学に加え漢方も含めた中医(東洋医学)全般を扱っています。ここでも鍼灸の治療見学及び実際に治療も受けましたが、外国人向けということもあり(本場のメンツもあるのかも知れませんが)キャリア30年のベテランの先生によりしっかりとした診断と治療がなされていました。現地駐在員やその家族など多くの患者が来院されるとのことで、ここでも「灸頭鍼」と「吸い玉」が多く用いられ肩こり・腰痛はもちろんのことストレスや冷えから起こるさまざまな疾患に効果をあげていました。上海の気候は神戸とほとんど同じで、今の時期はクーラーのきいたホテルやオフィスでパソコン操作に明け暮れるビジネスマンが不調を訴えるケースが多いとのことで、「風寒入阻経気不暢」(風寒邪の侵入のために気がのびやかに巡らないことによる疾患)に対する治療法につき色々と意見交換ができたことは有意義でした。
 また、ここでは鍼も使い捨てで、治療着やシーツなども(本来当然のことなのですが)患者さまごとに取り替えるなど衛生面でもしっかりと管理されており、昔の中国を知る者としては
ずいぶん変わったなぁ」と驚かされもしました。


国際医療センター入口
鍼治療風景


灸頭鍼を用いた
頚肩部の治療

ガラス球による
吸い玉


清潔な治療室
頚肩部の吸い玉
治療

腰痛に対する
治療風景

バネ指・腱鞘炎
に対する灸頭鍼

 以上、駆け足で2ヶ所の病院を訪問・見学してきたわけですが、鍼灸をはじめとする中医が広く人々の間に浸透しており、理論や技術だけでなく衛生面やサービスの分野でもさらに進歩していることを実感させられました。自身にも良い刺激となり、今後ともより良い治療家を目指して精進していこうという意を強くした次第です。
 最後に、快く治療見学や質疑応答に応じて頂いた上海市中医医院の厳海清先生と上海市静安区中心医院国際医療センターの徐正洪先生、今回の訪問をアレンジ頂いた古い友人である陳彩霞さん、陳さんのお友達の阮さんに対しこの場を借りて御礼を申し上げます。

上海市中医医院前にて
左から陳さん、阮さん、中村


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